春の新たなスタートに、新作てぬぐい

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春の新たなスタートに、新作てぬぐい

石本藤雄・てぬぐいシリーズ2024年春の新作を発売します。

幾何学模様や直線が特徴的な今回のてぬぐいには、新たなスタートにふさわしい名前が付けられています。フリーハンドで描かれたカラフルな菱形が並ぶ「蕾」、爽やかなブルーの線が走る「よーいドン」、二等辺三角形を組み合わせた「あさのは」の3種。石本にこれらのデザインにまつわる話を聞きました。

左から、「蕾」、「よーいドン」、「あさのは」

伝統柄を見直した「あさのは」

「やっぱり僕は、テキスタイルの中で見られる伝統柄というのを、起こしていきたいのですよ」

そう語る石本が、昨年手がけた伝統柄・弁慶格子(べんけいごうし)の次に注目した麻の葉模様。古くは平安時代から見られる柄で、その形が麻の葉に似ていることから「麻の葉模様」と呼ばれています。また、麻は成長がとても速く、まっすぐに成長し生命力も強いため、「麻の葉模様」には子どもの健やかな成長の願いの意味も込められています。

実は、過去に麻の葉模様の着物をデザインしている石本。1980年にフィンランドで公演されたオペラ「蝶々夫人」の中に登場する衣装の一つで、それは舞台映えする大胆な麻の葉模様でした。
 

書籍『石本藤雄の布と陶』(2012)に、当時デザインした着物の写真やスケッチが掲載されている。

以前は着物、今回はてぬぐいのデザイン。麻の葉模様をフリーハンドで描いてみたり、大きさや線の太さを変えたり、さまざまなパターンを試してみたと言います。


「六角形も一つの連続模様のベースになるわけですよ。それをどうやって繋いでいくか考えたけど、要はもう、あまり変化をつけないものが一番綺麗だと思う」
 

色は紫。石本にとって平安朝をイメージさせる色を選んだ。

完成した「あさのは」は、点と線で構成された幾何学模様。永遠に繰り返される均整のとれた美しさが魅力です。

CHUSEN てぬぐい あさのは

原画を活かし、捺染で表現「蕾」

カラフルな菱形が、これから花開くように見えるてぬぐい「蕾」は、鮮やかな色彩が魅力の一枚です。元々の原画は手のひらサイズの紙の中に描かれています。

違う色の線が重なる部分があるため、注染(ちゅうせん)ではない染め方とするのか、注染が可能なデザインに変更するのか選択する必要がありましたが、デザインはそのままに、捺染(なっせん)で製作することを選びました。
 

NASSEN てぬぐい 蕾

15×5.5cmの原画。原画は、やさしい色味。

「注染はどうしても滲むからやわらかい表情になるんだけど、捺染はきっかりそのままだから、硬いよね。表現が硬いです」

原画の線を忠実に、色は結果的にビビッドで、シャープな印象に仕上がったてぬぐい「蕾」。スタイリッシュな空間にも似合います。
 

柔軟な発想から生まれた「よーいドン」

太い線と細い線が、ある部分は等間隔で、ある部分は間隔を変えた縞模様のデザイン「よーいドン」。ある時、ふと閃いたそうです。

「大体、こういうのって、その時パッと出てきて、思いつきだから。最初は、均等な縞にしようということで考えていたのを、だんだん詰まっていくようにしてみた。陸上競技のトラックのイメージで。だから名前をよーいドンにしたんです」
 

CHUSEN てぬぐい よーいドン

細い線のピッチは、原画そのままではなく、データ化の過程で整えたのが分かる。

このデザインは色の選択がポイントでした。
「このデザインに対して、考えられる色は、赤か青か黒。で、同時にね、よーいドンって名前も出てくると、赤はまず外す。青と黒、どちらでもいいんだけど、とりあえず、今回は青にした。絶対的な色じゃないんですよ。色っていうのはね」

「あさのは」や「蕾」とのバランスを考えての青。染め上がった色を見て「この色は、よくできたと思う」と満足気に語ります。
 

「よーいドン」は、数多くの縞デザインを生み出した石本の新作縞とも言える。

「オリンピック、今年なのね」と語る石本。スポーツ観戦が好きな石本らしい発想から生まれたてぬぐい「よーいドン」です。

飾ると涼やかな印象に

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