色と色の重なりを味わう「かさね」新プレート発売
2022.11.26
- Journal
石本藤雄の故郷であり、伝統的なやきものの産地である愛媛県・砥部町。そこで器を制作する “atelier LUXE”と石本藤雄のコラボレーションによって生まれた「KASANE(かさね)」シリーズ。2色の釉薬の色と、それぞれの釉薬が重なりあうことで生まれる3色目の色とで織り成す世界を楽しめます。
PINKとGREENのカップが発売されてから1年以上が経ちましたが、今も人気の商品です。そんなかさねシリーズに、プレートが仲間入りすることになりました。
名前は「KASANE プレート WHITE」。生成りに近い白(失透釉)と薄い白(白マット釉)が重なりあった、やわらかな雰囲気のプレートです。焼成の窯の中の条件によって、淡いピンクの表情が加わることも。サイズはS(直径15センチ)とM(直径22センチ)の2種類です。
この「かさね」シリーズを制作するのは、atelier LUXEの郷田裕佳子さん。郷田さんのアトリエで、石本さんと郷田さんに、かさねシリーズについて伺いました。
石本さんからはじまる、色の世界
2013年に愛媛県美術館で開催された石本藤雄さんの個展「布と遊び、土と遊ぶ」。開催に向けて、石本さんの地元・砥部町の方々が実行委員として支えましたが、郷田さんもそのメンバーの一人でした。その後、IROIROという2色の釉薬を使った砥部焼商品の開発に関わるように。
石本さん:僕がサンプルで持ってきたのは、アラビアのコーヒーカップだったよね。
郷田さん:それを元に、釉薬のテストをお手伝いしていたのですけど、テストが出来上がったら、ちょっと作ってみないかと言われて、そのまま作らせていただいています。
石本さん:形そのものは、郷田さんが持っているものに釉薬をただ重ねることで、商品化できないかということで始めたみたいな感じですね。ここに何か絵を描くとかになると大変だから、釉薬に浸けて出してっていうので。他の人でも、どうすればできるかと考えたテクニックです。
郷田さん:それまで、その掛け分けという技法で色をつけたことはなかったですね。
IROIROでの釉薬使いの経験を踏まえて、Mustakiviでの商品として、形と色を変えた「かさね」シリーズの開発がスタート。しかし、その道のりには多数の困難がありました。
郷田さん:いろんな色のテストピースの一覧がありまして、そこから先生にこの色とこの色って選んでもらって決めました。この色なんですけど、実際にたくさんの量を作ってみるとなかなか再現性が難しくて、何度も改良しています。
石本さん:選ばれた色が大変な色だったわけ。安定している色だったら楽だろうね。それぞれの釉薬の濃度など、そういうのがうまく合っているといいけど、強弱があると色々難しいみたい。
郷田さん:かさねは何ていいますかね。彩度が低い感じのものは割と安定しているんですけど、彩度が高いと途端になかなか難しい。でも、やっぱり綺麗なのですよね。すごくいい色なので、どうしてもこれを再現したくて。石本さんのイメージに沿うものをなるべくできるようにというのは第一条件で、温度、濃さ、その基礎釉などのいろんなパターンを考えて、検討しています。
それでテストピースはうまくいっても、1キロ、3キロ、5キロという量を作って焼いてみると、テストとは違う反応になることは多々ありまして。これはあるあるです。
思う色を表現し、再現するために試行錯誤してきた郷田さんですが、その中で、ご自身の中に変化はあったのでしょうか。
郷田さん:石本さんがデザインした掛け分けの商品を作らせてもらった時から、色釉にすごく惹かれて、それから私自身の作品の中で、使う色釉の幅がものすごく増えてきました。砥部焼業界の中でも、色釉を使う人がすごく増えたと感じます。それまでは大体、砥部は青白磁、透明釉、瑠璃釉ぐらいの感じだったのですが、結構、最近は何でもありですね。
石本さん:だから一頃ね、色のついた焼物って、800℃ぐらいで焼いた、うんと安っぽいものが多かったの。かさねだと、そういう安っぽいイメージとは違うでしょう。
石本さんとの出会いから9年。その中で、郷田さんがデザイナー・石本さんに感じることはあるのでしょうか。
郷田さん:そうですね。やはり最初からこうイメージがきちんと決まっている。私なら、これもいいな、あれもいいなって思うんですけど、やっぱり石本さんは、こう、というのが最初から決まっているとすごく思います。きちんとしたイメージをされているのがすごいなあって。かといって、絶対にそうでなければ駄目という頑固な訳でもなく。
石本さん:お願いする場合はそれでないとね、受ける側もできないじゃない。でも最終的には、僕もいろいろすごく色目を使います(笑)。あれもいいなとか。
盛り付けが楽しくなる、ニュアンス違いの白いプレート
色目を使うと、ユーモアを交えて語ってくれた石本さん。この時のトークから、石本さんと対話しながらプレートの色が決まり、生産が安定するまで改良を重ねて約1年。ようやく販売スタートとなりました。カップは鮮やかな色を選んだのに対し、プレートはニュアンスが違う淡い白を選択。時折、淡いピンクが入ることがあり、風合いの違いをお楽しみいただけます。
Mサイズ(直径約22センチ)は、ワンプレート料理やメインの料理の盛り付けに。ソースなど多少の汁物は大丈夫です。ニュアンスの異なる白の重なりは、コロッケやフライ、肉や魚料理などの洋食はもちろん、焼き魚といった和食にも合わせやすく、多くの料理を受け止めてくれます。
Sサイズ(直径約15センチ)は、おかずを盛り付けたり、フルーツを添えたり、取り皿としてもお使いいただけます。
プレーンな白い器はたくさんありますが、どこかにありそうで、なかなかない、白と時々ピンクの「KASANE プレート WHITE」。あたたかな気持ちになる器を、お料理とともにお楽しみください。