遊び心が詰まった、冬のてぬぐい
2022.12.18
- Journal
MustakiviのCHUSEN(注染)てぬぐいシリーズの第4弾が発売となりました。「雪が降る」、「渓流」、「夜のとばり」、「ダンス」の4種。今回は、どのデザインも、筆やペンなどの線画で描かれているのが特徴です。
「てぬぐいのデザインは遊べる」と語る石本さん。今回は石本藤雄さんの手描きの線による、遊び心を感じられるコレクションとなりました。そこから見える景色について、デザインを手がけた石本さんにお話を伺いました。
いつか見た雪の日を形にした「雪が降る」
「雪が降る」は、空から舞い降りる雪を見上げているかのようなデザイン。いつか形にしたいとあたためていたデザインだったそうです。
「雪がちらちらと降ってくる感じを見せようとしたんですよね。どちらかというと初雪の感じ」と石本さん。
雪が積もることがあまりない愛媛県砥部町で生まれ、フィンランドに渡った石本さんにとって、雪はどんなものだったのでしょうか。
「雪が降るのはいいね。フィンランドにいた時、大雪がいっぱい降ったことがあって。忘年会なんかの時で、電車もなくなって、30分以上かかったけど、歩いて帰ったよね。タクシーに乗る気もしなかったんだろうなあ。雪もいいなあって」
暗闇の中、しんしんと降る雪の中を家路まで歩く石本さん。凍てつく空気を肌で感じつつも、いつもと違う雪が舞う風景に、心躍るものがあったのだろうと伺えます。そんな石本さんが思い描く雪景色が一枚となったてぬぐいです。
「夜のとばり」が降りてくる
「夜のとばり(帳)」は、夕暮れから夜に移り変わる風景が思い浮かぶデザイン。夕日が沈んだ後のマジックアワーから夜の闇に移る瞬間を切り取ったようなイメージです。様々な四角形がてぬぐいの生地一面に描かれています。
「昔、三角で、こう画面を埋めていったことはあるけれど、四角で埋めたいと思って。見方によれば、四角の方がもっと、いろんな表面の凹凸のニュアンスが出てきますね」
昔に手がけたテキスタイルデザインをアレンジさせた網のような四角のデザイン。平面の生地の中に凸凹した立体があるように見えてくるから不思議です。色は茶色になり、想定していた色とは違ったそうですが、それを夜の窓辺に飾ったところ、「夜のとばり」という言葉が石本さんの中に降りてきました。
「暗闇の中にあると、綺麗だね。実は、あんまり好きではなかったけど、見直しました(笑)。状況によっては良くもなるんですよ」
仕事を終えた夜に、お茶でも飲みながら、ゆったり眺めてみたくなる、落ち着きのあるデザインです。
筆が躍る「ダンス」
線がくるくると踊ってみえるデザインは、「ダンス」と名付けられました。体操で空中回転している様子にも見えてくる柄です。
その線が生まれた時のことを「何を考えてたんだろうなあ」と振り返る石本さん。てぬぐいのデザインとは関係なく、紙の上で手を動かしていたら生まれたそうです。その線は、気負いなく弾んでいて、何だか楽しそう。「色も悪くないよね」と語るように、地のグリーンが元気な印象を与えます。
ダンスはダンスでも、「モダンダンスかな」(石本さん)。石本さんの自由な遊び心が詰まったデザインです。
切り取り方を試行錯誤した「渓流」
「渓流」は、渓谷の水の流れをイメージしたデザイン。白い晒し生地にブルーの線が走る、爽やかな印象の1枚です。「流れていくようなものとして作ったけど、これは渦を巻いている感じかな」
原画は素直に流れるようなデザインでしたが、当時はそのままてぬぐいの柄にするのは、納得がいかず、原画を拡大したり、トリミングしたり、試行錯誤を繰り返して、現在の形になりました。
「それがデザインなんですよ。デザインするっていうことは、いかに眺めるか。眺めによって、全然、物が変わってくる」
切り取り方次第で、全く違うものに見えてくる、その面白さを感じた制作過程でした。
「OKSA てぬぐいバー」とともに
今回の4種のてぬぐいも、濡れたものを拭いたり、目隠し代わりの布として使うのはもちろんですが、飾ってお楽しみいただけるデザインです。気軽に飾っていただくためのツール「OKSA てぬぐいバー」も同時期に発売となります。
てぬぐいも含めて、テキスタイルデザインは、言わば、リーズナブルなアート作品。実際に飾ってみると、使う時とはまた違う魅力に触れることができます。冬の小さな贈り物としてもいかがでしょうか。