年の瀬をデザインしたタイムレスなてぬぐい発売

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年の瀬をデザインしたタイムレスなてぬぐい発売

石本藤雄デザインのてぬぐいシリーズ2003年冬の新作を発売します。

今回の新作は、三角形をダイナミックに配置した「ゆく年くる年」、グレー地に格子柄の「暮」、カラフルな点々が連なる、「いろいろあったね」の3種。これらのデザインにまつわる話を石本に聞きました。

左から、「いろいろあったね」(捺染)、「ゆく年くる年」(注染)、「暮(くれ)」(注染)

ゆく年とくる年を一枚に表現

「ゆく年くる年」は、赤とグリーンの三角形が向かい合う幾何学的なデザイン。これまでのMustakiviのてぬぐいにはない印象のデザインです。この発想はどこから生まれたのでしょうか。

力強く、空間に映えるデザイン

「今回のてぬぐいが発売されるのが、クリスマスシーズンということだったのですよ。クリスマスって、僕のイメージではクリスマスツリーというか、三角なんですよね。それで、三角で何かできないかと思って」

三角からイメージを膨らませた石本藤雄。2種類の三角形を組み合わせたのは、ある閃きがあったようです。

「年の暮れということで、『ゆく年』『くる年』の2つ。それでこういう三角形の向かい合ったアイデアが出てきたんです」

そう言われると、砂時計のようなデザインが、今年と来年がバトンタッチをするように見えてきます。実は、元々は二つの三角形の先端がつながるデザインでした。しかし、注染(ちゅうせん)で一度に2色を染められるように、先端を少し離すことになりました。それが、「逆にこう火花が散るみたいになって、エネルギーが感じられる」と、結果オーライだったようです。

色は、愛媛県美術館で購入したという色紙から組み合わせを考えました。過去にマリメッコでデザインしたテキスタイル「Ostjakki(オストヤッキ)」も色紙で色を指定したというエピソードがある石本。身近なものも使うものづくりは、今も変わりません。

参考にした色紙。染め見本から色紙のイメージに近い色を選んで染めている。

実はこのてぬぐいは、畳み方によっては、元のデザインをキープできるのが特徴の一つ。広げて壁に掛けることもできれば、折りたたんでコンパクトなサイズにしても、三角形が向きあうデザインをお楽しみいただけます。

手のひらサイズに折っても、デザインの良さを楽しめる。

穏やかな暮の風情を、色と格子で表現

「暮」は、やさしい上品なグレーに細い白い線の格子柄のデザインです。「ゆく年くる年」とともに発売することを想定して制作が進みました。どんな空間にも馴染みやすく、使いやすい柄です。

白い空間にも馴染むデザイン

秋に発売した格子柄の「べんけい」や「中べんけい(ちゅうべんけい)」に続く格子柄として、4本線と1本線が交わるチェック柄のアイデアを練っていたという石本藤雄。メモ帳に描いたアイデアを元に、データ上で直線が交わる図案を作成しました。「データでは、まっすぐの線にしたんですね。よろけた線ではなくて」

手に持つ一番上のアイデアが暮。左のグレーの紙は、データを出力した原画。

染めでは、地色の淡い色味のグレーを活かし、細い白い線を出すために、技術的には注染で、白い線の部分は抜染剤で色を抜く方法をとりました。そのため、注染ならではのよろけた線になり、味わいにつながっています。

注染ならではの手仕事のぬくもりを感じさせる線

「僕、個人的にはこの格子はすごく好きです」と、実際の仕上がりを見て、満面の笑みをこぼす石本。このてぬぐいに「暮」という名前をつけました。

「しんみりしてるものね。しんみりっていう表現がいいよ。きっと」

喧騒から離れて、静かで穏やかな、年の瀬の暮のひと時が浮かびます。

格子柄を手がける理由を聞くと、「僕、好きなんですよ。単純に。理由はそれだけ」と語る石本。

50年眠らせていたアイデアをてぬぐいに

赤、青、緑、黄色の、雫のような点々が並ぶ「いろいろあったね」。カラフルで元気が出る、軽やかなデザインです。「ゆく年くる年」と「暮」の発売に、バランスを考えてもう1点加えることになり、眠っていた数あるアイデアの中からこのデザインが選ばれました。

光をかざすと、生地の透け感も楽しめる。

原画は、1970年代初頭、フィンランドに渡った頃に描き溜めていた習作(練習のために作品をつくること)の中の一つ。2022年に発売したてぬぐい「SONO」、「HANAMICHI」も同時代の習作が元になっています。水彩で描かれており、そのタッチから、リズム良く筆を置いていった様子が想像できます。

50年大切に保管されていたアイデア。「原画のまま繰り返した訳ではなく、この中から拾って新しく組み立てています」と石本が語るように、てぬぐいサイズへの収まりやリピートなどを考えてデザインが完成しています。

手にしているのが「いろいろあったね」の原画。

このデザインのために、鮮やかな発色が可能な捺染(なっせん)という染め方を選びました。捺染に使う生地は注染のものとは違い、浴衣などに使われるサラッとした感触のもの。その独特の質感もお楽しみください。

色鮮やかな仕上がり。注染と違い、表と裏があるのは捺染の特徴。

ネーミングは、「色」と掛けて、「いろいろあったね」としましたが、「雰囲気としては、これは新春だよね」と語る石本。眺めていると、晴れやかな新しい年を迎えられそうです。

石本が年の瀬を思いながらデザインしたてぬぐい3種。デザインと並行して、ネーミングもたくさんのアイデアを振り絞った中で決まっています。
そんな手ぬぐいを、年末年始の空間の設えとして取り入れる、布巾を新調して身近に使うなど、新年を迎える彩りとして使ってみませんか。もちろん、年末年始以外でもお楽しみいただける普遍的なデザインです。

石本の直筆メモ。てぬぐいのネーミングのアイデアが並ぶ。

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