秋を彩る、なでしこのてぬぐい

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秋を彩る、なでしこのてぬぐい

石本藤雄・2024年秋てぬぐいの発売です。
 
この秋の新作3柄は、秋の七草の一つでもある撫子(なでしこ)がテーマになっています。
カラフルな花を軽やかなタッチで描いた「カーネーション」、カラフルな色の花が咲き誇る「なでしこ」、1994年に制作した絵皿のドローイングをもとに、てぬぐいの中にモノクロの世界で表現した「なかよし」の3種。石本のこれらのデザインにまつわる話を聞きました。

軽やかなタッチを楽しむ、「カーネーション」

手の勢いが感じられる力強い筆のタッチと、カラフルな色使いによって魅力的に表現された花々。今回のなでしこシリーズの中で、最初に浮かんだデザインがこの「カーネーション」でした(カーネーションはナデシコ科ナデシコ属)。

CHUSEN てぬぐい カーネーション

まず、4つのカーネーションを線画で描き、色を塗っていきました。花の色は、ピンク、黄色、白、赤の4色。このデザインでは色で迷うことはなかったそうです。
 
「だって、この感覚からいったら迷うことはないわけ。ひらめきなの。塗りは、ベタできっちりと入れることもできるけど、雰囲気としてはもっとラフな感じでいきたかったんです。それで色の線で埋めたらどうかということで、これに」

線と色の版を分けて、ラフな塗りに。

原画の色よりも、実際の染め上がりは落ち着いた色となり、そこがまた秋らしさにつながっています。
 

作品から派生した黒と白の世界「なかよし」

モノクロのモダンなデザイン「なかよし」は、石本が1994年に制作した絵皿に描いたカーネーションのドローイングを、手ぬぐいをキャンバスに、ポジ(白地に黒の線)とネガ(黒地に白の線)で表現しました。
 

てぬぐい「なかよし」と、カーネーションの絵皿。

「その昔やった、カーネーションの絵皿を思い出して。その写真を撮って、注染のてぬぐいになるように、まとめていったわけね。それで、それをそのままポジネガにした」
 
ドローイングは、カーネーションの姿を大胆に捉えています。
「こういうカーネーションって、あると思うんだけどね。僕の空想上のものかもしれないけど、一応、こういう萼(がく)のところを見ればね、カーネーション」
 
てぬぐいへの絵柄の配置は、最初は悩んだと言います。
「最初はアイデアがなくて、さて、どうしましょうとなって。2つ並べて、ポジネガにした形で、結果としては良かった。似たようなものが2つ並んでいるから、仲がいいんでしょう、きっと」
 
黒と白の世界が2つ並ぶことから、「なかよし」というネーミングが生まれました。

手にしている紙は皿の絵柄を拡大したもの。注染で染めるために、若干変更を加えて、てぬぐいの図案としている。

絵皿のドローイングを拡大して、トレーシングペーパー上にトレース。

シリーズを彩る甘い表現の一枚、「なでしこ」

秋の七草のなでしこといえば、カワラナデシコ。花びらの先がギザギザになっているのが特徴的な可憐な花です。この花をデフォルメしたかたちを、大小さまざまに散りばめて生まれたデザインを「なでしこ」と名付けました。 

CHUSEN てぬぐい なでしこ

なでしこのさまざまなバリエーションをつくり、てぬぐい上に散りばめた。

「先にデザインした「なかよし」と「カーネーション」だけだと、なんか色気がないのね。それでもっと素直になでしこを表現できないかっていうことで。だから、これは可愛い感じ。色気っていうか」
 
ピンクの花の中に、赤やグリーン、白い花が覗いているのがポイントになっています。
「ちょっと生きた表現が欲しくて。1色だけだと、だるくなるからね。もちろん、大小があって、変化をつければ、それなりに生きてくるけれど」

ピンクのなでしこの上に違う色の花を貼ってバランスを整えた。

生きた表現「なでしこ」が、今回のなでしこシリーズに彩りを添えています。
「好きなデザインはどっちかというとね、格子とかさあ、硬い方やね。でも、やっぱり甘いものもしないとね、成り立たないから」

石本の創作に登場してきた、なでしこ

「秋だから、なでしこをやりたいと思った」と語る石本。
石本にとって、なでしこは、幾度もデザインのモチーフにしてきた花です。マリメッコのテキスタイルデザインやMustakiviの商品で、小皿やてぬぐいの絵柄になっています。

Lauantaiehtoo(marimekko)

PIKKU 小皿 NADESHIKO

作品のモチーフにもなっていて、2007年に赤いカーネーションのレリーフを発表しており、書籍『石本藤雄の布と陶』の中で紹介されています。この作品は、フィンランドを代表するガラスデザイナー・オイバ・トイッカに渡ったそうです。
 
「これ(カーネーションのレリーフ)は、てぬぐい「なかよし」に近い。感覚的には同じような。花や萼の描き方が近いでしょう」

書籍『石本藤雄の布と陶』に掲載されているレリーフ作品と「なかよし」を比べる。

石本の創作を語る上で欠かせない、なでしこの花が、「てぬぐい」になりました。拭く、敷く、巻く、包む以外に、壁にかけたり、ブックカバーにしたりと、使い方は自由。日々の暮らしの中でお楽しみください。

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