石本藤雄展「芥子-けし-」

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石本藤雄展「芥子-けし-」

2025年7月25日(金)20:00より、「石本藤雄展 芥子」の作品の中から、オンラインストア分の発売を開始します。販売ページはこちら(7/25 20:00公開)。

FUJIWO ISHIMOTO - 芥子 Ⅰ(オンライン販売)

FUJIWO ISHIMOTO - 芥子 Ⅱ(オンライン販売)

FUJIWO ISHIMOTO - 芥子 Ⅲ(オンライン販売)

FUJIWO ISHIMOTO - 芥子 Ⅳ(オンライン販売)

FUJIWO ISHIMOTO – 青梅(オンライン販売)

FUJIWO ISHIMOTO – 春夏秋冬(オンライン販売)

本展では、芥子の花や果物、季節や風景を抽象的に描いた絵皿13点を発表しています。今回制作した作品について石本に尋ねました。

幾度もモチーフになった花「芥子 -けし-」

「芥子」の作品は7点制作しています。角皿にぽってりとしたカラフルな花が描かれ、間近で見ると、薄い花びら、花脈のような筋まで表現されています。なぜ芥子をテーマとしたのでしょうか。

「芥子の花は、ずっとアイデアとして持っていたわけ。アラビアでもやったし、1991年にアメリカ・オマハでも。このテーマはずっとよくやっているんです。この時のクレパスでやったスケッチが残っているんですよ。だから、またもう一度やろうと思って」

1990年にアラビアで制作した黒い芥子の絵皿。『On the Road』より

1991年に制作した絵皿。『石本藤雄の布と陶』より

石本の中で、何度かチャレンジしてきた芥子。蕾の時はうつむくような下向きに、花開く時には上を向く、ユニークな花というのも魅力の一つです。
「そういう意味で、画面がつくりやすい花だと思いますよ。画面の構成に変化をつけられて面白いと思います」

ピンと伸びたり、曲がっていたり、その姿を約42×34cmの角皿の中に大胆に表現しています。

中央は「芥子Ⅰ」。オレンジ色の芥子が登場するのはこの作品のみ。

陶芸作品のほか、マリメッコのテキスタイルとしても、度々登場する芥子の花。石本の記憶に強く刻まれたのは、高校時代に目にした風景でした。

「校庭に咲いていた芥子のイメージが頭の中に強烈にあるわけ。何十株という色とりどりの花が一面に咲いている」

その風景を切り取ったかのように、今回の作品にも、赤、白、ピンク、黄、オレンジ、黒--。色とりどりの芥子の花が咲き誇っています。

Puutarhakutsut(ガーデンパーティ,1989)の中の芥子

さらに、芥子にまつわる記憶を辿ると、1冊の本が思い浮かびました。

「アーヴィング・ペンには、すごく刺激されて影響を受けています。そういうものが背景にあって、これなんかも出ているわけです」

20世紀を代表する写真家、アーヴィング・ペンの『Flowers』(1980)。ケシや薔薇、チューリップなど、花をクローズアップした写真集は、多くのクリエイターに影響を与え、石本も所蔵している1冊です。

「芥子Ⅱ」は、一輪の花をクローズアップしてダイナミックに描いている。

生命力を感じさせる芥子の花ですが、実は、花の命は短いことで知られています。儚いからこそ、その一瞬の美しさが人々を魅了して止まないのではないでしょうか。その一瞬を捉えた石本の芥子。日本で制作した本作は、過去のものとは違い、信楽の土そのものの色を生かしたやさしい印象の作品に仕上がっています。

実りや風景を表現

果物も、石本がよく取り上げるモチーフです。今回は、「枇杷」「桃」「青梅」を53×26cmサイズの角皿に描きました。大ぶりの枇杷は、石本がイメージする実りの姿。1991年にアメリカでも制作しています。桃は3回焼いたことによって現れた、桃色の釉薬の表情も魅力的です。瑞々しさを感じさせる青梅は、桃の制作途中に生まれました。

FUJIWO ISHIMOTO – 枇杷(店頭販売)

また、風景や季節を表した抽象的な作品3点も制作しています。「山」は、奈良の若草山のような、なだらかな山をイメージしたといいます。
「最初、緑の部分はベージュの土色だったわけ。それがつまんなくてね。それで織部(緑)の釉薬を入れて焼き直したら、ハッとするような作品に。光が差すとすごく面白い感じが出る」

中央の作品が「山」(店頭販売)。釉薬の濃淡や貫入の入り具合から生まれる表情に味わいがある。

「春夏秋冬」と「湖畔」は、プレート面は白、縁をそれぞれ異なる色で着色しています。「春夏秋冬」は筆で、「湖畔」は吹きつけで行なっていて、技法の違いによる表現を見て取れます。抽象的な作品に風景や季節の名前をつけたことで、見る人の想像が膨らむ味わい深い作品となりました。

台上の左の作品が「春夏秋冬」(オンライン販売)、手前が「湖畔」(店頭販売)。

今回の絵皿の型は、石本がフィンランドのアラビア社で自ら制作したもの。ムスタキビのプロダクトで見られるフォルムにも近い、石本が生み出すかたちです。そのかたちをベースとした絵皿を「普通、壁にかける感覚なんだけどさあ、こういうのは置いてもいいわけですよ。まあ、果物を盛ってもいいし」と石本。レリーフとは違う絵皿ならではの良さを語りました。

全ての作品のサインは、角皿を素焼きした2024年に刻まれています。絵付けをして完成したのは2025年です。

オンラインストアでの販売は、7/25(金)20:00スタートです。店頭販売の作品は、会期中、ご購入いただけます。

本展覧会は8/31まで開催いたします。角皿というかたちの中に表現された、石本が見つめた自然、そして土と釉薬が織りなす世界を、ぜひ、会場でご覧ください。


石本藤雄展 芥子 -けし-
会期:2025年7月17日(木)〜2025年8月31日(日)
場所:Mustakivi gallery&(松山市道後湯月町3-4 上人坂テラス)
オンラインストア発売:7月25日(金)20:00〜
 

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