石本藤雄の石、花道、園。そして五周年。

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石本藤雄の石、花道、園。そして五周年。

Mustakivi5周年を記念した新作てぬぐいが、オンラインストアにて発売開始となりました。「SONO」「ISHI」「HANAMICHI」「GOSYUNEN」の4種。すべて石本藤雄さんの手描きのデザインが元になっています。その原画を前に、石本さんにお話を伺いました。

左から、「SONO」「ISHI」「HANAMICHI」「GOSYUNEN」

古い紙の束に眠る、色褪せないアイデアたち

左から、SONO、GOSYUNEN、HANAMICHI、ISHIのデザイン原画。SONOは水彩、HANAMICHIとISHIはポスターカラーで描かれている。GOSYUNENはネガを原画に。

うっすらと茶色に変色し、時の流れを感じさせる紙に、軽やかに、またあるものは力強い筆づかいで描かれたデザイン。鮮やかな色彩は色褪せることなく、当時のままの姿を今にとどめています。

「これは、昔の習作だね」と語る石本さん。習作とは、練習のために作られる作品のことを指します。マリメッコのテキスタイルデザイナーとして、日々、アイデアの種を集めていた石本さん。閃いたアイデアを元に、自ら手を動かしてデザインを描き、気に入ったものは一つひとつ大切に保管してきました。それはテキスタイルデザイナーになりたてのものも含めて。線画のものもあれば、今回のような筆で描いたものも。まだ発表されていないそれらのデザインは、フィンランドから日本への大引越しの中でも幸運にも捨てられることなく、持ち帰られました。

「今、ここにたまたま集まったものは、全然何の制約もなく、求める方向もなく、自由にいろんなイメージを描き集めてきたものですね。目的があるとすれば、プリントするっていうことだけ。そんな昔の古い習作の中から、今見ても、よいと感じるものを集めてみました。絵に面白みがあるものを。とにかく筆の遊び、色の遊び、まだ、遊びですよね。すごく自由なフリースタイルっていうか」(石本さん)

マリメッコ時代は、幅150cmの生地が延々と続くという形のものづくりの中で、如何に連続性を生み出していくかを常に念頭に置きながらデザインを考えていたといいます。迷いなく自由で遊び心のある手の動きから生まれたデザインの中から、Mustakiviの新作デザインとして選ばれた4点は、四弁の花や、勢いのある筆使いなど、マリメッコのテキスタイルを彷彿とさせるものもあります。そんな石本作品のルーツを想像しながら眺めてみるのも面白いかもしれません。

ISHIの原画。

マリメッコのSumo。ISHIと同様の力強い筆づかい。

マリメッコのKukkaketo。もし、SONOのデザインがマリメッコの生地になっていたら、四弁の花はベタ塗りで表現されていたかもしれない。

デザイン原画の魅力を伝統的な技法「注染」によって表現

選ばれた4点のデザインは、もともとマリメッコの生地の大きさを想定していたもの。それをてぬぐいのプロポーションに合う形で収めました。染めは、てぬぐいの専門店「かまわぬ」。重ねたてぬぐい生地の上から下に染料を流して染める伝統的な「注染」という技法で染めており、裏表なく鮮やかに染まります。昨年発売した、てぬぐいやハンカチでも、注染を採用していますが、プリントとは異なる、線に滲みや揺らぎが生じる味わい深い表情に、石本さんも面白みを感じています。

「このデザインを描いている時には、濃淡は関係なく、色の塊で仕上がりをイメージしていたと思う。だけど、この注染というテクニックならば、水彩の滲みとか、そういうものがぴったりいけるんじゃないかと思ったんですよ。ベタっとした表面だけのプリントではなくてね」

そんな石本さんの思惑通り、HANAMICHI SONOISHIの水彩画の濃淡を、注染の滲みで見事に表現することができました。

HANAMICHI

SONO

ISHI

風景が浮かぶ一枚の布を、あなたの暮らしの中に

4種のてぬぐいのネーミングも石本さんによるものです。四弁の花が連なり、花園の風景が思い浮かぶ「SONO」、色とりどりの花が並ぶ情景を連想させる「HANAMICHI」、漢字の“石”に見えてくる「ISHI」、力強い5本の線が5周年ともつながる「GOSYUNEN」。石本さんの言葉選びが絶妙で、見る人の心の中にある風景が浮かびあがってきます。

ちなみに、4種の中から石本さんにとってのお気に入りの一枚を聞くと、「いや、僕はどれかひとつって言えないですね。我が子はみんな可愛い」と顔を綻ばせました。

そんな思い入れのあるてぬぐいを、あなたの日々の暮らしに。石本さんの幼少期の記憶には、女性が頭に巻いて仕事をしていたシーンが残っているそうです。そんなふうに日差しを遮る布として使ったり、布巾として手や濡れたものを拭いたり、子どもの口元を拭いたりなど、鞄に1枚忍ばせておくと便利です。

さらに、インテリアとしても。吊るして掛け軸のように飾るのはもちろんですが、半分に折り畳んだ状態で現れる柄も楽しむことができ、その鮮やかな色彩は空間コーディネートのポイントになります。それは室内のみならず、屋外でも。石本さんの遊び心や彩りを、自由に取り入れて、遊んでみませんか。

ベランダの植木にひっかけてみる。風に揺れる姿が涼を呼ぶ(ISHI)。

テーブルに広げてみると、テーブルが引き締まって見える(GOSYUNEN)

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