Flora_037|Oiva Toikka|1983–1986
Designer: Oiva Toikka
Year: 1983–1986
Size: Φ7.5 × H9.3 cm
Maker: ARABIA / Nuutajärvi
オイバ・トイッカがデザインした《Flora(フローラ)》シリーズのなかでも、とりわけ珍しいグラスです。
Floraは1966年に発表され、今日ではオイバを代表する作品のひとつとして知られています。今回ご紹介するのは、そのなかでも1983年から1986年頃までの短期間のみ製造された「037 Whisky Glass」です。
このグラスには、少し不思議なエピソードがあります。
オイバがアメリカを訪れた際、偶然Floraの模造品を見つけたそうです。そこで彼は、その存在を否定するのではなく、「このサイズはなかなか良いね」と受け止め、自ら改良を加えた上で商品化したと伝えられています。
本物と模造品。
通常であれば対立するはずの関係ですが、オイバはそこに新しい可能性を見出しました。
間違いや偶然を排除するのではなく、発想の起点として受け入れる。その柔らかさこそが、彼の創作の魅力だったのかもしれません。
2023年には、このエピソードにちなみ、Mustakivi Online StoreでFloraをご購入いただいた方へ模造品を一点お付けする企画も行いました。ありがたいことに即完売となり、今回がそれ以来の再入荷となります。
友人のコレクターたちも口を揃えて「これまで数回しか見たことがない」と話すほど、このグラスの流通は限られています。何らかの理由で、生産数は極めて少なかったようです。
ものの価値は、ときに視点によって変わります。
模造品との出会いから生まれた本作も、そのことを静かに教えてくれているように思います。
興味を持っていただけたら、この機会にぜひご覧ください。
Oiva Toikka(オイバ・トイッカ)|1931–2019|FINLAND
フィンランドを代表するデザイナーのひとり。「Kastehelmi(カステヘルミ)」や「Birds by Toikka」をはじめ、多くのプロダクトやアート作品を生み出しました。鮮やかな色彩や大胆な造形で知られる一方、その創作の背景には民俗芸術や古代文化への深い関心がありました。戦後フィンランドデザインが機能性や合理性を追求するなかで、オイバはむしろ、ユーモアや偶然性、人間らしい不完全さに魅力を見出していました。
「私はそれを仕事とは呼ばないね。楽しむことが好きなんだ。」
83歳のときに残したその言葉の通り、彼の作品には自由な発想と遊び心が息づいています。石本藤雄とも親交が深く、互いの作品を暮らしのなかで愛用していました。
ARABIA / Nuutajärvi(アラビア/ヌータヤルヴィ)|FINLAND
Nuutajärviは1793年創業の、フィンランド最古のガラス工場のひとつです。1950年にARABIAと同じWärtsiläグループの傘下となり、カイ・フランクをアートディレクターに迎えたことで、フィンランド・ガラスデザインの黄金期を築きました。1988年にはIittalaと統合され、2014年にガラス生産は終了。オイバ・トイッカをはじめ、多くの名作がこの地から生まれました。