Sargasso_Pitcher|Kaj Franck|1966–1970
Designer: Kaj Franck
Year: 1966–1970
Size: Φ19 × H23.5 cm
Maker: Nuutajärvi
Sign: Nuutajärvi Notsjö
カイ・フランクがヌータヤルヴィで手がけた《Sargasso(サルガッソ)》シリーズ。
1966年に発表されたこのシリーズは、ガラスの内部に無数の気泡を閉じ込めた表現によって知られています。その名は、海藻が漂う北大西洋の「サルガッソ海」に由来するといわれています。
こちらは《N433》と呼ばれるピッチャーです。
1966年から1970年までの限られた期間のみ製造されました。
サルガッソシリーズには厚みのあるガラス作品も多く存在しますが、このモデルは型を用いない吹きガラスによってつくられています。
職人がガラスに息を吹き込みながら形を与えていくため、輪郭も、気泡の表情も、一つとして同じものはありません。
ガラスの内部に浮かぶ無数の気泡は、海流のなかを漂う泡や海藻、あるいは水中に差し込む光の粒子を思わせます。
サルガッソ海という名前も、そうした自然の風景への静かな眼差しから生まれたのかもしれません。
繊細な口縁の線。
ゆるやかに膨らむ輪郭。
そこには、作為よりも素材そのものに形を預けるような姿勢が感じられます。
石本藤雄さんも長年花器として愛用してきました。
私自身も日々の暮らしのなかで使い続けていますが、
花を無造作に挿すだけで自然と様になる。その気負いのなさも、この器の魅力のひとつだと感じています。
Kaj Franck(カイ・フランク)|1911–1989|FINLAND
「フィンランドデザインの良心」と称されるデザイナー。ARABIAやNuutajärviで数多くの名作を生み出し、その思想はひとりのデザイナーの活動を超えて、フィンランドのデザイン観そのものに大きな影響を与えました。機能や合理性を追求しながらも、カイの造形には、どこか人間らしい揺らぎや温かさが残されています。幾何学的でありながら、完全には閉じきらない曖昧な線。その有機的な余白が、愛着へとつながっていくように思います。日本の民藝や手仕事の文化に深い関心を寄せていたことも、今あらためて見つめ直したい点です。1970年には石本藤雄と出会い、その後のお互いに影響を与えました。日常に根ざしながら普遍的な美しさを探求した姿勢は、今なお多くの人を惹きつけています。
ARABIA / Nuutajärvi(アラビア/ヌータヤルヴィ)|FINLAND
Nuutajärviは1793年創業の、フィンランド最古のガラス工場のひとつです。1950年にARABIAと同じWärtsiläグループの傘下となり、カイ・フランクをアートディレクターに迎えたことで、フィンランド・ガラスデザインの黄金期を築きました。1988年にはIittalaと統合され、2014年にガラス生産は終了。オイバ・トイッカをはじめ、多くの名作がこの地から生まれました。